ご挨拶
「ダヴィンチ」によるロボット支援手術は前立腺がん、腎臓がん、膀胱がんで保険適応となっており、当院泌尿器科でも対応しています。
ロボット支援手術の長所・患者さんのメリットとして
- 自由度の高い手術用鉗子や3次元画像により、繊細で安全な手術操作が可能。
- 術中の出血量が減少し、傷も小さいため術後早期回復が期待できる。
があげられます。
前立腺がんに対して2015年10月よりロボット支援前立腺全摘除術を開始し、これまでの手術件数は200例以上となっています。また2018年7月から腎臓がんに対する腎部分切除術を、2018年9月からには膀胱がんに対する膀胱全摘除術を開始しておりこれまでに腎部分切除術は15例、膀胱全摘術は34例に施行しています。
ロボット支援前立腺摘除術について
全身麻酔で行います。腹部に1㎝程度の傷を6カ所加えトロカーと言われる筒を留置したうえで頭低位、砕石位でダビンチとドッキングします。そこからカメラ、操作鉗子を挿入し前立腺を周囲から切離します。尿道断端と膀胱の吻合を行い、最後に傷の1カ所を3cm程度ひろげ前立腺を取り出します。
ロボット支援腎部分切除術について
全身麻酔で行います。腹部に1㎝程度の傷を5カ所加えトロカーと言われる筒を留置したうえで側臥位でダビンチとドッキングします。そこからカメラ、操作鉗子を挿入し、術中エコーで腫瘍部の深さや大きさを確認したうえで腫瘍を含め腎を部分的に切除します。腎切除部分の縫合を行い、最後に傷の1カ所から切除した腎腫瘍を取り出します。
ロボット支援膀胱全摘術について
全身麻酔で行います。腹部に1㎝程度の傷を7カ所加えトロカーと言われる筒を留置したうえで頭低位、砕石位でダビンチとドッキングします。そこからカメラ、操作鉗子を挿入し膀胱を周囲から切離します。その後に尿路変向術(後述)を行い、最後に傷の1カ所を5cm程度ひろげ膀胱を取り出します。
尿路変向術について
膀胱には尿を貯めて排出するという機能をもっているので、膀胱を摘出した場合には、腎臓でつくられた尿を、なんらかの方法で体外に排出する必要があります。そのための手術が尿路変向術で、膀胱摘出と同時に実施されます。患者さんの病態、ご希望を考慮したうえで下記の3タイプから術式を選択しています。
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回腸を利用した新膀胱造設術(従来通り尿道から排尿するタイプ)
回腸(小腸)を使って新たに尿を貯める袋を作成して代用の膀胱とします。これを尿道につなぐことによって尿道から自分で排尿できるのが特徴です。集尿器具は必要ないので患者さんのQOL(生活の質)はとても良くなります。しかし、本来の尿意がないため時間を決めて排尿するなどの排尿管理が必要になります。
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回腸導管造設術(腹部に収尿袋を装着するタイプ)
回腸(小腸)の一部を導管として使い、腹部にストーマを作成する方法です。ストーマからは絶えず尿が出てくるため集尿器具を皮膚に貼り付けておき、定期的に交換することが必要となります。
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尿管皮膚瘻造設術(腹部に収尿袋を装着するタイプ)
尿管を直接腹壁につなげ、腹部にストーマを作成する方法です。ストーマからは絶えず尿が出てくるため集尿器具を皮膚に貼り付けておき、定期的に交換することが必要となります。
従来は膀胱を摘出したのちに、開腹を行う体腔外で尿路変向を行う(extracorporeal urinary diversion:ECUD)を行ってきましたが、最近では2、3について、体腔内でロボット下に行う(intracorporeal urinary diversion:ICUD) で施行するようにしています。
よくある質問
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ロボット(ダヴィンチ)が手術をするのですか?
ロボットが自動で手術を行うことはありません。認定を受けた医師が操作を行い手術を行います。
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前立腺は全摘しないといけないのでしょうか?
前立腺がんは前立腺内部に発生し、がんの部位を正確に特定することが困難であることに加え、小さな臓器であるために部分切除が難しいことから全摘術が必要になります。
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尿路変向術後、ストーマの管理が心配です。
手術前に担当医から十分に説明を行うとともに、皮膚・排泄ケア認定看護師にも介入していただくことにより術前から退院後の患者さんのQOL(生活の質)を高めるように努めています。