小さなお子さんは自分から症状を訴えず、また対象となる年齢も新生児から思春期まで幅広いです。小児科では問診1つとっても成人とは異なる配慮が必要となります。家庭でのケア方法などについて、親御さんと密なコミュニケーションを取ることも欠かせません。こうした小児科ならではの特性やチーム医療の現状について、日本アレルギー学会専門医である田中由起子先生にお話を伺いました。
私たちが診療する機会が最も多いのは、感染症のお子さんです。成人と違い、小児科では一人ひとりの診療や検査に時間も手間もかかります。クリニックでの対応が難しいときにこちらへご紹介いただきます。高熱が下がらない、肺炎を起こしている、酸素が必要である、胃腸炎で嘔吐が続き数日間輸液が必要な場合など、数日間入院の上で治療することもあります。
当科では、クリニックで実施できない検査・治療に対応する専門外来も設けています。例えば、熱性けいれんを何度も繰り返したり、発熱がないのにけいれんを起こしたりするときは、てんかんなどの疾患が潜んでいる恐れがあります。そのような場合は、小児神経内科外来で脳波検査や頭部MRI・CTなどの画像検査、診断・治療を行っています。
心疾患については小児循環器外来で診療しています。心臓の雑音や不整脈は健診などで指摘されると、何らかの心疾患が隠れていないかを見分ける必要性が出てきます。心エコー検査、心電図検査(ホルター心電図やトレッドミル心電図検査も必要時)などを行います。更なる精密検査や手術などを要する疾患だと判明すれば、高次医療機関にご紹介します。
「どのようなアレルギー疾患を専門医に診てほしいか」について一般の医師が回答したアンケートによると、一番多いのは食物アレルギーだそうです。アレルギーを疑う食物を実際食べて検査をする「食物経口負荷試験」ではアナフィラキシーの既往や、アナフィラキシーをおこす可能性のある人は緊急時に備え入院可能な医療機関での検査が望ましいこともあり、当科で多く紹介を受けています。
アレルギー疾患のある人の多くは、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、じんましんなど、複数のアレルギー疾患を併せ持っています。そのため、アレルギーのお子さんに関わる医療者はアレルギー全般の専門知識を持って対応しなければなりません。当科でこれを担うのが、多職種による「小児アレルギーチーム」です。このチームではアレルギー専門医による診療のほか、ご家庭での食事についてアレルギー専門管理栄養士が相談に応じる「アレルギー栄養相談」や、アレルギー専門看護師がご家庭でのスキンケアや薬の使い方などを指導する「アレルギーケア指導外来」なども設けています。
こうしたきめ細かな対応ができるのは、チーム医療ならではのメリットです。例えば、外来で医師から親御さんに説明するとき、知識を一度に頭に詰め込むと理解が追いつかないこともありますが、医師の前で「分かりません」とは言いにくいようです。そこを看護師から「先生の話、分かりましたか?」と尋ねると「実は…」とおっしゃることも。お子さんが処置を嫌がってスムーズに進まないときも看護師が入ればうまくいくことがあり、フォローをしてくれています。
親御さんだけでなく保育所や学校の先生方も対象とした、アレルギーの基礎知識や実際の対応などに関しての講義です。座談会の時間も設けています。
講習会の一番の目的は参加者に専門知識を持っていただくことですが、皆さんがどのようなことに困っているのか、診察室では聞けない素朴な疑問や現場の声を直接聞くこともできるため、私たち医療者の学びにもなっています。コロナ禍ではオンライン講習会となりましたが、遠方の方はかえって参加しやすくなったなど、吉と出る一面もありました。多いときは100名近く参加されることもあり、皆さんと共通認識を持つことができる貴重な場となっています。
例えばアトピー性皮膚炎のように繰り返しやすい病気の場合、スキンケア、ステロイド外用療法(塗布する範囲・量・期間・塗布間隔をあけるタイミングなど)の十分な指導を受けていないと再び症状が出てきます。表面の湿疹がきれいに治ったように見えても、その下に炎症が残っていれば、重症ではなくても何度もぶり返すことがあるのです。
しかし、一方的に説明してパンフレットを渡すのではなく、実際に親御さんの目の前で私たちがお子さんに薬を塗り、さらに親御さん自身もその場で塗ってみて、「このくらいの量なんだ」「このぐらいの時期は塗らないといけないんだ」と実感していただきます。気管支喘息についても同様なことが言えます。ご家庭でのケアを続けやすいようにアレルギーケア指導外来でもフォローし、正しく理解・納得していただけるよう努めています。
手洗い、マスク着用が当たり前になった2020~2021年は、感染症が大きく減少したり、流行する時期が例年と少しずれたりと異例尽くしでした。
その一方で、新型コロナウイルスに感染することを恐れ、受診を控える方が増えました。極端な例でいえば、発熱が続いているのに受診が遅れ、ぐったりした状態で夜間の救急にかかったお子さんもいました。緊急事態下では急病やケガで即受診していいかどうか迷うこともありますが、「子ども医療電話相談(#8000)」を活用するなど、可能な範囲で早めに行動を起こしてほしいと思います。コロナ禍の緊急事態下、当科では再診のお子さんには電話診察も行うなど柔軟に対応する体制も整えたのでお気軽にご相談ください。
小児科では本人が症状を上手く訴えることが難しかったりします。お子さんがぐったりしているのか、逆に意外と元気そうにしているのか、お子さん自身の様子に目を配ります。いつも見ている親御さんの「そういえば…」という言葉の端々に診断のヒントが隠れていることもあるので、何か引っかかることがないか注意深く耳を傾け、疑うべきところはしっかり疑っていきます。
学童期では腹痛や頭痛、微熱などがあって登校できないお子さんがいるとき、実は重大な病気が原因で症状が出ている可能性もあります。心の問題にも考慮しながら、何らかの徴候を察知したら体への負担が少ない検査から始め、場合によっては更に精密検査を進めて行く必要があります。
やりがいを感じるのは、何といってもお子さんが成長する姿を見るときです。盛んに泣いていた赤ちゃんがあっという間に大きくなる様子を、親御さんと一緒に見守ることができるのは、私たちにとって大きな楽しみです。変わるのはお子さんだけではありません。慣れない育児に奮闘をしていた親御さんが育児のベテランになっていく。そんなご家族の変化を見聞きし一緒に喜べるのも小児科ならではの醍醐味ですね。
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