膀胱がんの大部分は膀胱の内部を覆う尿路上皮から発生する尿路上皮がんです。肉眼的血尿でみつかることが最も多いため、血尿をみとめた際は、膀胱がんの鑑別が必要となります。膀胱がんでは間欠的無症候性血尿が特徴であるため、症状のない血尿がいったん改善したとしても放置することにより進行することがあるため注意が必要です。血尿を主訴に当科を受診いただいた患者さんに対しては、早急に膀胱鏡検査を施行し膀胱がんの有無を確認します。
膀胱がんを見逃さないために、肉眼的血尿がある場合や、尿検査で尿潜血反応が陽性の場合はご相談ください。
膀胱がんは、膀胱壁にがんがどのくらい深くまで及んでいるか(深達度)によって、筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分類され、治療方針が大きく分かれます。まず診断と治療を兼ねて経尿道的膀胱腫瘍切除術を行いその後の治療方針を立てていきますが、転移のない筋層浸潤性がんと診断がついた場合には膀胱全摘除術が標準治療となります。
画像提供:インテュイティブサージカル合同会社
2018年4月よりロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除が保険収載となりました。当院でも内視鏡手術支援ロボット: ダヴィンチを用いて同年9月から施行しています。
ロボット支援手術の長所・患者のメリットとして下記があげられます。
膀胱がん診療ガイドラインでもロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術は開放膀胱全摘除術よりも低侵襲で、同等の制がん効果が報告されており、考慮することが推奨される(推奨の強さ2,エビデンスの確実性B)となっています。
当院でも導入後から現在まで大きな合併症なく33例に施行しており、近年ではほぼ全例ロボット支援下に膀胱全摘術を行っています。出血量が大幅に低下しており、輸血率も格段に低下しています。
開腹膀胱全摘術(151例) | ロボット支援膀胱全摘術(33例) | |
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平均手術時間 | 553分 | 548分 |
平均出血量 | 1100ml | 260ml |
輸血率 | 84.1% | 15.2% |
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(術中写真)
となります。
膀胱を摘出した場合には、腎臓でつくられた尿を、なんらかの方法で体外に排出する必要があります。そのための手術が尿路変向術で、膀胱摘出と同時に実施されます。
患者さんの病態、ご希望を考慮したうえで下記の3タイプから術式を選択しています。
従来は膀胱を摘出したのちに、開腹を行う体腔外で尿路変向を行う(extracorporeal urinary diversion:ECUD)を行ってきましたが、最近では上記2.3について、体腔内でロボット下に行う(intracorporeal urinary diversion:ICUD) で施行するようにしています。
本症例は女性の症例であり、遊離した膀胱を膣から摘出することにより傷はトロカー創部のみ
膀胱全摘術は、ロボット手術になったとはいえ侵襲が大きい手術です。さらに、腹部に収尿袋を装着することは、ボディイメージが変化し術後のライフスタイルに大きく影響します。そのため患者さんにとってはストレスの大きい手術となります。手術前に担当医から十分に説明を行うとともに、皮膚・排泄ケア認定看護師にも介入していただくことにより術前から退院後の患者さんのQOLを高めるように努めています。 しかしながら、年齢、パフォーマンスステータス低下、基礎疾患などにより膀胱全摘術が適応外となる患者さんや膀胱全摘術を希望されない患者もおられます。その場合は個別に対応し、できる限り皆様の希望に沿った治療選択枝を提示しています。
〒653-0013
神戸市長田区一番町2丁目4番地
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