肺がんは、肺を構成する空気の通り道である「気管支」やガス交換の場である「肺胞」の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんは50歳以上に多く、1993年からは男性のがん死亡率の第1位となり、女性では大腸がんに次いで第2位となっています。
肺がんは喫煙との関連が大きく、タバコを吸う人の肺がんになるリスクはタバコを吸わない人に比べて男性で4.4倍、女性で2.8倍と高くなります。喫煙の他、職業や環境による要因、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、肺がんの家族歴や既往歴などがリスクを高めると考えられます。
肺がんの症状は様々です。一般的な呼吸器疾患にみられる咳、痰、血痰、胸の痛み、息切れなどがあります。他、転移による症状がきっかけて肺がんが見つかることも少なくありません。頭痛、ふらつき、麻痺、肩や背中や腰の痛み、声のかすれ、顔のむくみなどは、一見肺がんと全く関係がない症状の用ですが、転移した肺がんにみられることがあります。そして、症状がほとんど出ないことも多いです。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
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総数 | 大腸 | 胃 | 肺 | 乳房 | 前立腺 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸6位 |
男性 | 前立腺 | 胃 | 大腸 | 肺 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸5位 |
女性 | 乳房 | 大腸 | 肺 | 胃 | 子宮 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸2位、直腸7位 |
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
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総数 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位 |
男性 | 肺 | 胃 | 大腸 | 膵臓 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位 |
女性 | 大腸 | 肺 | 膵臓 | 胃 | 乳房 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸9位 |
肺がんが疑われて呼吸器内科の外来を受診する最初のきっかけは、胸部X線やCT検査で肺がんを疑うような影が認められた場合がほとんどです。 ステージ(どの程度肺がんが体に広がっているのか)を決めるため、CT検査やMRI検査やPET-CT検査などを行います。
そして、肺がんかどうかの確定のため、実際に異常がある箇所の細胞をとってきて顕微鏡で観察します(これを病理検査と言います)。異常がある箇所の細胞をどのようにしてとってくるのかは、いくつか方法があります。痰が出る場合は痰の検査を行ったり、胸に水がたまっている場合は針で水を採取して検査をして、肺がんと診断できる場合もあります。痰の検査や水の検査は体への負担は少ないですが、詳細な肺がんの種類を確認するためには不十分である場合もあります。細胞をとってくる検査として、気管支鏡検査や経皮的針生検、胸腔鏡検査、外科的肺生検などがあり、患者さんの状態や異常が認められている場所を総合的に判断し、どの検査を受けていただくかを提案します。
他、診断や治療の参考とするため、血液検査、肺機能検査、心電図検査などを行います。
頭部造影MRI
造影CT
PET
PET-CT
肺がんの治療は2種類に分けることができます。がん細胞をやっつける治療と、がん細胞はやっつけないけれどもがんによる症状をとる治療です。前者は手術、放射線療法、薬物療法が挙げられます。後者は緩和ケアと呼ばれます。
どの治療が最適なのかは肺がんの状態や患者さんの状態により様々です。当院では呼吸器内科・外科・放射線治療科と定期的に会議を行い、最適な治療を複数の医師で協議し治療方針を決定します。なお、緩和ケアは症状があるがんの患者さん皆が受けることができる治療です。
主に早期の肺がんに対して行われます。外科手術によって、がんに侵されている肺を切除してがんを取り除きます。
がんに放射線を当てることでがん細胞を死滅させたり、増殖を防ぎます。以下のような場合に放射線療法がおこなわれます。
・手術不能な早期肺がんに対して、根治を目的として行う根治的照射
・局所で進行し手術不能であるが遠隔転移のない肺がんに対して、細胞障害性抗がん剤と併用して治療を行う化学放射線療法
・骨や脳といった転移に対して症状を和らげたり進行を防ぐために行う緩和的照射
当院では放射線治療の設備はありませんが、近隣の医療機関と連携して行っております。
従来から用いられていた「細胞障害性抗がん剤」に加え、近年新しい治療選択肢として加わっている「分子標的治療薬」や「免疫チェックポイント阻害剤」の大きく分けて3種類があります。従来からある細胞障害性抗がん剤やその副作用対策も進歩してきていますが、特に分子標的治療と免疫チェックポイント阻害剤は近年大きく進歩しています。
細胞障害性抗がん剤
全身にひろがったがん細胞を直接攻撃する薬剤です。様々な種類があり、肺がんの種類や患者さんの状態により、使う抗がん剤を決めていきます。単独で用いられる場合も、2~3種類の薬剤が併用される場合もあります。一部を除き点滴によって投与します。正常な細胞に対しても作用するため副作用があります。抗がん剤の種類によって点滴のスケジュールや出やすい副作用が異なります。
分子標的薬
ある特定の遺伝子の変異が起こることで、がんが発生したり進行したりすることがあります。その特定の遺伝子を標的とした薬のことを分子標的薬と呼びます。分子標的薬は細胞障害性抗がん剤と比較して副作用が軽く治療効果が高いことが多く、基本的に飲み薬であることが特徴です。しかし「特定の遺伝子変異」がある肺がんでないと使えません。
免疫チェックポイント阻害薬
がん細胞は私たちの体の免疫を抑制するシステムを利用し、攻撃を受けないようにすることが分かっています。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫機能を抑制する働きを弱めることで、がん細胞に対する免疫を高めてがんを攻撃します。従来の細胞障害性抗がん剤とは異なる副作用がありますが、一部の患者さんでは長く効果を発揮します。免疫チェックポイント阻害薬の効果は、PD-L1というたんぱく質ががん細胞にたくさん認められる患者さんで高い傾向にあります。
上記の薬物療法のうち、どれが最適かは患者さんの状態や肺がんのタイプにより異なります。近年では、細胞障害性抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬を同時に用いることで治療効果が上がることが分かってきており、進行した肺がんの薬物療法として一般的になりつつあります。血管新生阻害薬と呼ばれるタイプの薬物療法も併用する場合があります。
がん細胞をやっつけないけれども、がんによる症状や苦痛をとる治療の事を緩和ケアと呼びます。症状があるすべてのがん患者さんが受けることができる治療です。例えば痛みがあることに対して痛み止めを使ったり、咳があることに対して咳止めを使うことも緩和治療の1つであり、決して終末期のみに行うものではありません。がんの診断や治療の過程で生じる苦痛に対して、早い段階で緩和ケアを行うことで、患者さんのよりよい生活を目指します。当院では医師や看護師、薬剤師、理学療法士、ソーシャルワーカーなどの多職種の医療スタッフが参加協力した、緩和ケアチームが存在し、それぞれの専門性を生かしたチーム医療を行っています。また、通院が難しい状態のがんの患者さんも、当院の地域連携室の協力のもと、近隣の病院、訪問診療医、訪問看護師と連携して緩和ケアの提供に努めます。
〒653-0013
神戸市長田区一番町2丁目4番地
地図で見る Tel: 078-576-5251
Fax:078-576-5358(代表)/ 078-579-1943(病診連携室)
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